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第二章・10
「あの、ご相談ですが」
「何か?」
初老の男が、契約書を手に訊き返してきた。
「住み込みで働かせていただければ、非常にありがたいんですけど」
この広いお屋敷なら、空き部屋がいくらでもありそうな気がしていた瑞樹だ。
これ以上、兄の負担になりたくない、との考えから、そんなお願いをしていた。
「いかがしましょう、若様」
「別に構わんよ。むしろ、その方が都合がいい」
では、部屋を用意いたしましょう、とのやり取りに、瑞樹は頭を下げた。
「ありがとうございます!」
面接は、ものの10分も経たずにで終わってしまった。
「さて、仕事に戻るか」
誠が、ソファから立ち上がった。
「あの、僕も手伝います」
思わず、瑞樹もそれに続いていた。
「勤務は明日からだ。今日働いても、時給はでないぞ」
「仕事を、少しでも早く覚えたいんです。手伝わせてください」
では、彼について行きなさい。
そう言って、誠は初老の男・石丸(いしまる)を指した。
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