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第二章・11
「こちらが、作業着です。白川さんなら、Sサイズで大丈夫ですね」
お召し物を汚されては大変ですから、お着替えください、と瑞樹はカーキ色の上下を渡された。
「あの、叶さんのこと、『若様』って呼んでますよね。あれは一体なぜですか?」
「それは、若様に直接お訊ねになられた方が」
瑞樹には、他にも訊きたいことがたくさんあった。
なぜここは、こんなに立派なお屋敷なのか。
植物園、と名刺にあるが、草ぼうぼうの荒れ地なのはなぜか。
石丸さんのような身なりの人間が、屋敷内ちらほらいるのは、どうしてか。
「全て、若様にお訊ねください。そして、答えをいただけるような仲になっていただきとうございます」
石丸は、高い天井を見上げた。
「若様は、孤独な御方です。そのお心を、慰めてさしあげていただきたい」
なんとも篤い石丸の忠義だ。
瑞樹は、素直に感動した。
「僕、お仕事がんばります!」
「頼もしく思いますぞ。前の方は、一ヶ月で辞めてしまわれた。その前は、二ヶ月。そのまた前は、三ヶ月……」
どんどん短くなってる!?
こんなに待遇がいいのに、即・退職だなんて。
(やっぱり叶さんには、何か秘密があるのかな)
やや胡散臭いボスではあるが、瑞樹は誠について行くことにした。
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