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第三章 あなたをお慕いします
瑞樹が連れて来られたのは、屋敷玄関の正面庭園だった。
あの、夏草が茂り放題の場所だ。
「白川くんには、ここの草刈りをしてもらう」
瑞樹は、呆然となった。
この広大な敷地を、全て僕が刈る。
考えただけで、眩暈がした。
「始めは、この草刈り機でざっくり切って。その後、こいつで掘り起こせばいい」
そう言って誠がぽん、と叩いたのは、家庭用耕運機。
ぐらぐらしている間もなく、草刈り機が手渡された。
「白川くん、これは使えるか?」
「はい。高校の頃、園芸部でしたから」
「……柔道部じゃなかったかな?」
「じゅ、柔道部を辞めて、園芸部に入りました!」
そう、と誠はうなずいた。
「じゃあ、お手並みを拝見しよう」
誠の見守る中、瑞樹は草刈りを始めた。
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