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第三章・3
「10分の1くらい、できたかなぁ」
いや、まだまだだ。
しかし、これ以上続けると、倒れてしまいそうだ。
木陰で休憩を取っていると、石丸が現れた。
「白川さん、これを」
若様からです、と渡されたのは、冷たく冷えた経口補水液だった。
そしてそれには、花が添えられていた。
「レンゲソウの花?」
今は真夏なのに、どうしてレンゲソウが。
しかし、その清楚な姿に瑞樹の心は潤った。
「本日はここまででお帰りください、とのことです。お疲れさまでした」
「あ、はい」
水を飲んでしまったボトルは石丸に渡したが、レンゲの花は大切に持って帰った。
「レンゲソウの花言葉は、っと」
兄宅に着き、さっそく調べてみると、こんな言葉があった。
『あなたと一緒なら苦痛がやわらぐ』
すまない、と瑞樹に謝る誠の姿が甦った。
「……叶さんも、僕と同じ気持ちなんだな、きっと」
間引かれていい命なんて、ないんだもの。
その晩は疲れて、すぐに眠ってしまった。
一面のレンゲソウの夢を、見た。
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