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第三章・5

 発注を終え瑞樹は、ふと思った。 「こんなにたくさんの芝生、結構値段も張ったけど」  でも、叶さんは涼しい顔だ。  子どもが駄菓子を買うより気軽に、ぽんとカードを渡してくる。 「仕事に関する金は、このカードで払ってくれ。領収書は、石丸に渡せばいい」  何て、お金持ち。  でも、どうして? 「どうして叶さんは、こんなにお金持ちなんだろう」  大きくて、時代がかった洋館。  そこで働く、数十名の人々。  広い庭園。  そして、謎の温室。  誠はいつも、この大きな温室で作業をしているようだった。 「いつか僕も、入れてもらえるかな」  そんな毎日を過ごし、張った芝が養生を済ませる頃には、初の給料が支払われた。

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