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第三章・6

「手取り30万円だ!」  瑞樹は、ほくほくと通帳を手にしていた。  まずは、お世話になった兄への御礼だ。  それから、欲しかった靴。  新しい服も、買おう。  美容院にも、行こう。 「えっと……」  そこまで考え、瑞樹は思った。 「衣食住、全部お屋敷にお世話になってるけど、お給料から引かれてない」  スマホに送られた給料明細には、それらに関する項目が一切ないのだ。  いいのかな、と何だか申し訳なくなった瑞樹は、石丸に訊ねてみた。 「若様がよいとおっしゃるのでしたら、よいのでしょう」 「つまり、叶さんが僕をただで養ってくれてる、ってことですか?」  それではあまりにも、ずうずうしいのではないか。 「若様は、白川くんが来てから随分と明るくなられました。そのお礼として、どうぞこれからもここで暮らしてください」 「でも」  う~ん、と瑞樹は考えた。  だったら、叶さんにも初任給で何かプレゼントしよう。  そして、フラワーショップに走った。

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