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第三章・7
「叶さん、白川です」
今の時刻ならオフィスにいらっしゃる、と石丸に聞き、瑞樹は誠を訪ねた。
「どうぞ。入りたまえ」
「じゃ~ん。プレゼントです!」
薄紅の可愛らしい花束を抱えて登場した瑞樹に、誠は眼を円くした。
「なぜ?」
「いつもお世話になってるから、です」
どうぞ、と瑞樹は誠に花を手渡した。
「ゴデチア、か」
「今の、僕の気持ちです」
その言葉に、誠の口元がほころんだ。
「それは嬉しいな」
「やっぱり解りましたか、花言葉。さすがだな」
ゴデチアの花言葉は、『あなたをお慕いします』だ。
ただの雇い主以上の思慕を、瑞樹は誠に抱くようになっていた。
「では、いよいよ君にこの花を託す時が来た、ということか」
そう言って、誠は窓辺に飾られたハイビスカスの鉢植えを撫でた。
「えっと。ハイビスカスの花言葉は……」
瑞樹は、急いでスマホを操作した。
「ハイビスカスの花言葉は、『あなたを信じます』」
瑞樹は顔を上げ、誠を見た。
「白川くんに、新しい仕事を任せよう」
ついてきなさい、と誠は部屋を出た。
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