41 / 67

第五章・6

 中に通され、再び驚いた。  そこには、無数のバラの花々が絢爛に咲き誇っていたのだ。 「ここは、バラ専門の温室ですか」 「そう。半分は当たっている」  半分。  後の半分は? 「ここは、青いバラを創り出そうと品種改良を重ねている聖域だ」 「青い、バラ」  でも、と瑞樹は考えた。  確かに青いバラは、以前は創り出すことが不可能とされていた。  だが今は、遺伝子操作で見事にその姿を人類に見せてくれたのでは? 「私の家は、代々植木などの植物を扱っていてね。青いバラを生み出すのは、曽祖父からの悲願なんだ」  バイオテクノロジーに頼らない、自然の力を借りて出現させる、青いバラ。  それが、誠の研究目的なのだ、と言う。

ともだちにシェアしよう!