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第六章 辛いけど、苦しいけど、そして、悲しいけど。
誠の求める空のような青を持つバラは、なかなか生まれなかった。
「土壌を、もう少し酸性にしましょうか」
「これがアジサイなら、すぐに真っ青になってくれるだろうがね」
「散水の量を、減らしましょうか」
「さて、どのくらいから始めてみようか」
「肥料、もう少し増やしましょうか」
「有機肥料も混ぜてみるかな」
そうして咲いた、青いバラ。
「失敗だ」
「え? で、でも」
以前のものより、随分と青が強い気がします、との瑞樹の慰めも誠には伝わらなかった。
誠は全ての作業を放って、温室から出て行ってしまったのだ。
「叶さん!」
ばたん、と荒々しい音を立てて閉められた、ドア。
差し伸べた瑞樹の手も、阻まれてしまった。
パタリ、とその腕を下ろし、瑞樹はバラに向き直った。
「せっかく咲いてくれたのに、ごめんね」
後の処理は、僕がやっておこう。
のろのろと、瑞樹はバラを3D写真に収め、データ処理を行った。
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