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第七章・2

「確かに、若様の食欲は落ちておいでです」 「やっぱり」  どうしてだろう。  先だって、研究用のバラに蕾が付いた。  今度こそ、青いバラが咲くかもしれないのに。 「楽しみじゃないのかな」  それには、石丸が眉間に皺を寄せた。 「若様は、幼い頃から今は亡き旦那様と共に、幾度となくバラの咲く様を見て来られました」  そして、そのたびに落胆なさる旦那様の姿も。 「じゃあ、叶さんも」 「そう。若様も、旦那様と共に幾度となく落胆されて来られたのです」  可哀想な、叶さん。  瑞樹の眼に、涙がにじんだ。  何回も、何十回も、何百回も、雲をつかむような研究を重ねて、そのたびに夢を打ち砕かれてきたんだ。 「叶さんのために、何かしてあげたいな……」 「その気持ちだけでも、充分です。若様の力になってあげてください」  石丸はそう言ってくれたが、瑞樹は考え込んでいた。

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