55 / 67
第七章・4
「誰だ」
「叶さん、僕です。白川です」
こんな夜更けに。
「今夜は、呼んではいない」
「あの。ちょっとだけ、お部屋に入れてもらえませんか?」
珍しく、押して来る瑞樹だ。
「入りなさい。鍵は開いている」
「ありがとうございます」
そっとドアが開き、瑞樹が入って来た。
それと同時に、かすかに甘い香りがした。
瑞樹が近づくにつれ、その匂いは強くなるようだ。
「白川くんは、コロンを付けていたか?」
「いいえ、いつもは付けません」
いつもは、ということは、今は付けているというのか?
にっこり笑う瑞樹が、やけにコケティッシュに見える。
「今夜は、特別なコロンを付けてます」
そして、彼の方から誠に口づけて来た。
「叶さん……、抱いてください」
熱く甘い、吐息。
思考が痺れるような、囁き。
「白川くん。君、発情してるのか」
「当たりです……」
紅い舌で、瑞樹は誠の唇をちろりと舐めた。
フェロモンと言う名のコロンを纏い、瑞樹は誠を誘いにかかった。
ともだちにシェアしよう!