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第八章・2

「んぁ、ふぁ、ふっ、ふっ、あ。ひぅ、はぅ、あぁん……」  ひくひくと余韻に悶える瑞樹を、誠はしっかりと抱きしめた。 「ありがとう、瑞樹」  次第に火照りが退いて行く思考の中で、誠は瑞樹の真心を噛みしめた。 「君を抱いている間中、青いバラのことを忘れていたよ」 「叶さん」 「私は、青に縛られ過ぎていたな。バラはバラで、愛しい存在に変わりはないのに」 『叶さん、この子ちょっと元気がないんですけど』  瑞樹の、この言葉を思い出していた。  後で調べてみて解ったことだが、確かにあの株は日照不足だったのだ。  あの時と同じ嗅覚で、瑞樹は私の病的な雰囲気を感じ取ったに違いない。 (お爺様、お父様、私は青いバラを生み出すことができないかもしれません)  ですが、かけがえのない存在を手に入れました。 「叶、さんん。く、苦しい、ですッ」 「ああ、すまない」  強く強く瑞樹を抱いていた腕を、わずかに緩めた。  二度と離したくない、宝物だった。

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