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第3話

*** Ω性のくせに、子供を作れないだなんて。 今は投薬治療により発情期は来るようになったが、子宮が小さく子供は依然として望めないまままだ。 子どもができないことが結城のせいだとは思わないし、Ωの種としても劣る俺が結城に選ばれなかったのは当然のような気さえする。 自分はこのまま消えてしまおう。 結城とあのΩの幸せなんて見たくない。そう思って高校を卒業した後、俺は地元でて上京した。誰も俺を知らない環境で高校卒業まで隠していたΩ性として生きていこうと思った。 両親から金を借りて顔をいかにもΩらしい、 誰にでも愛されるものに変えた。 するとどうだろう。 今まで自分のことは皆βとしか思ってなかったであろう連中が自分をΩの貴重種として扱ってくれる。服を誂え機嫌をとり、可愛い、好きだと言ってくれる。 でも俺の心は動かない。 好意は受け取るが身体は許さない美人のΩがいると徐々に噂になり、その噂を元にコンタクトを取ってくる年上の友達やパトロンが増えていった。 その後知り合った一人がどうやら芸能プロダクションの社長だったらしく、直々にスカウトを受け芸能界入りすることになった。 今の彼の名前はKIKI(キキ)だった。 キキはその美貌と、本名年齢が非公開にもかかわらずΩ性のみを公表しているミステリアスなモデルとして読者や一部のSNSユーザーの中でカリスマ的存在になっていた。 誰もキキの心を動かせない、壊せない。 偽物の、見かけに陶酔してるだけだと毒を吐くのはキキの中の俺ぐらいだった。

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