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第31.5話【後日公開分】

キキは優しく、いつも儚げだった。今の孤独な佐伯の心に寄り添うのはどちらかというと、真白ではなくキキだった。番いの話だけでなく、家の話はキキとしかしていない。そのほかの仕事での憤りや迷いを話せるのもキキだった。真白は自分と別れた16歳くらいの年齢から成長していないのか、自分の気持ちばかりで27になる佐伯が付き合うには少し壁があるように感じてしまったのだった。 (もしかしたら、俺はキキに惹かれ始めているのかも知れない) キキは自分を抑圧する人間に対して、優しく声をかけてくれた。それが本心でないにせよ、佐伯の心を温めるのには十分だった。 翌日佐伯が目覚めると、もうそこにキキの姿はなかった。あるのは首輪をいじりながら、子供のように駄々をこねる「真白」の姿だった。 その時はじめて佐伯は自分の愚かさと、罪の大きさを知ったのだった。 「俺のこと、噛んでよ。噛んでいいから、外して」 真白の口がそう動いた。目の前の人物が、とても今まで自分が熱を注いできた人間とは思えなかった。

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