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最終話(続)

「俺もキキのこと好きだよ」 その言葉を聞いた瞬間、今までのことが全部消えて本当の自分になれた気がした。 ◇◇◇ その日は何もせず、相模とキキは二人でベットで語り合った。会わなかった3ヶ月間のことや、佐伯のこと。熱愛報道の発端の色川のこと。それにこれからの二人のことを。 「俺はβだから、キキの番にはなれない。結婚は制度上できるけど、キキが番持ちじゃないことには変わりない」 Ωとは男女関わらず、またバース性に関わらず婚姻関係を結ぶことができた。しかし、Ωが一般社会で働くには、暗黙ではあるが番い持ちであることが最低条件であることが多かった。キキが働く働かないに関わらず、番い契約を結べない相模と結婚しても、番い持ちであることにはならなかった。 「そうだね」 キキはその事実は重々承知していた。相模に言われるまでもなく。番いになる利点はそれだけではない、発情期の煩わしさからも解放される。Ωが番いを見つけたがる一つの要因の一つではあった。しかし、キキはそんな利点など一度も考えたことはなかった。むしろ自分たちの障壁は、そんなものではないのだ。 「キキはこれからも発情期に苦しめられるし、いつかは俺のバース性もバレる」 相模には世間に隠していることがあった。それは自身がβ性であると言うこと。キキと交際し順調に発展したのちに結婚に至ったとき、いずれ周囲はなぜキキの頸に噛み跡がないのかと疑問に思うだろう。首輪で隠すのはもっと変だった。そうでなくても、綻びはいつか出てくる。実際佐伯や色川は相模のバース性に気づいている様子だった。 「でもね、僕は発情期から解放されたくてケイを望んだわけじゃない。僕だって、発情期は来るけど、子供はほぼできないと思う。 …ケイが僕との子供を望んでも、僕はそれに答えられない。」 キキもまた、Ωであるが、自身に問題を抱えていた。それで引け目を感じることなど微塵も無いのだが、どうすることもできない問題の一つではあった。 「そうだね、でも俺はキキが好きだから。 二人でもっとお互いを知って、これが俺たちの愛の形だぞって、いつかみんなに認めてもらいたい」 佐伯が真面目な話をしているのに、愛の形だなんて言うからキキはおもわず笑ってしまう。どんなことも相模となら乗り越えて行ける気がした。 「事務所に、言ってもいい?」 キキが相模に尋ねると相模は「もちろんだよ」と笑顔で答えた。

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