学園祭の準備、と言うものの今日はテレビ局の取材が入るため生徒会のメンバーは学校に登校しなければならなかった。夕方のテレビの数十分、一昨年から始まった男子校の女装コンテストというのがSNSで拡散され注目を浴びた我が校が取材されることになっていた。今日取材しあしたの夕方に流れる予定で、生徒でごった返している夏休み明けよりかは、比較的校内が静かな夏休み中に取材が行われる事になった。 「冴島くんー！こっちー！」 　壮が校内に入ろうとしたところ、校舎のすぐ隣にある食堂から声がかかった。 「おはよう、加賀くん。もう取材きてる？」 　壮より小柄な加賀は生徒会の一員で、今時珍しく制服をしっかり着ている眼鏡の華奢な男。壮と同じ三年生だ。 「もうすぐ来るみたいだよ！生徒会長の冴島くんを置いて取材は始まらないから安心して！」 　はは、と乾いた笑いを零し壮はネクタイを締め直した。TVの間だけでいいから、制服はキチンと着るように、と校長に言われたのを思い出したからだ。 　壮が生徒会に入ったのは大学へ進む時に有利になる、という理由が大きかった。去年の学園祭でたまたま女装コンテストに出て名前が広がり、生徒会の演説で挨拶するとああ、あの子ね、という感じで票が集まり生徒会長になった。 「TV局の人もびっくりでしょうね！！生徒会長が有名人顔負けの美形だなんて、どこの漫画の話だって！」 　加賀はテンションが上がってきたのか、力拳を握って話している。 「加賀ー、冴島ー、取材の説明あるからこっちにこい」 　食堂の扉が開かれ、学年主任が顔を出した。その後ろには取材の為のカメラや機材を持った大人がずらずらと並んでいた。 　何でよりによって自身が生徒会長のタイミングで取材なんだ、と壮は取材が決まってから何回目かわからないため息をついた。