始業式が終わり滞りなく１日が終わり、夕飯の時間。両親と夕飯を食べている時、玄関の扉が勢いよく開く音が聞こえた。高校一年生の弟はバイトに勤しんでいる。思い当たる人物はひとりしか居なかった。 「壮ーーー！！！」 　想像通りの幼なじみが足音も気にせずリビングに入ってくる。 「あら、伊織くんいらっしゃい」 　ご飯いる？なんて聞く母親は伊織のことがお気に入りで、無断で入ってくる事にも、ドシドシ歩く事にも何にもいわなかった。 「壮！お前SNSやばいよ！」 　伊織は手に持った携帯を壮に見せてきた。 　そこには今日放送されたらしい取材の映像が写真で拡散されていた。ご丁寧に去年優勝した女装の写真も共に四枚の写真があった。 「去年のやつね、やっぱ我が子ながら美形に生まれたわあ」 　なんてのほほんとした母親。父親も綺麗に撮れてるなあ、なんて言っている。 「まあ想定内。女装した時も拡散されたし、数日したら落ち着くよ。学園祭まで待つかどうかでしょ」 　約一年前のSNS騒動を思い出してため息をつく。拡散された最初こそ戸惑ったものの、数日も経てば違う話題が拡散されはじめ、数ヶ月も経ったころにはいつもどおりの日常になっていた。 「でも学園祭みんなくるってコメントが！」 　投稿しているページのコメントには約１ヶ月後に学園祭が迫っている事、入場規制なし、ということも一緒に拡散されていた。 「まあ仕方ないよ、取材受けた先生もそれくらい見越してるでしょ」 　でも、と続ける伊織を尻目に目の前の夕飯に箸を伸ばす。伊織くんどうそ、と炊き込みご飯が入ったお茶碗を受け取り、伊織もいつもの定位置、壮のすぐ隣に腰掛けた。 「この危機感のなさはお母さん譲りだなあ」 　なんて言う父親に、両親譲りみたいですね、と伊織がぼそっと呟いた。