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「黒澤です、はじめまして」  今日の朝、テレビで秋上映の映画の宣伝に出ていた男が目の前にいた。スラッと長身で派手な金髪の男は数日前生徒会室で噂していた黒澤琥太郎だった。 「いやー、なんだ、黒澤さんの事務所の関係であの芸人が出れなくなってな」  元々来るはずだった芸人は、数日前にSNSで女性問題が拡散されていて、つい先日活動休止になっていた。なんでこのタイミングで?と壮は思ったが、タイミングの悪い星に生まれてきたのか、と自分を言い聞かせる。 「こちらの所属タレントの不祥事により、この度はすみませんでした」  黒澤のその言葉に、隣にいたマネージャーらしき人は手に持った菓子折を校長に手渡していた。  校長室でソファーの前に立っているマネージャー、その対面には校長と教頭がいて、入り口近くに壮達生徒会のメンバーが立っていた。そして、冒頭の挨拶の為か黒澤は壮達の目の前に立っていた。  加賀と井原はすぐ近くにいる黒澤から目が離せないようで、じーっと食い入るように見ていた。 「はじめまして、生徒会長の冴島です。……こちらは生徒会のメンバーの2人です」  口をぽかんと開けたまま挨拶もできそうにないふたりの代わりに簡単に自己紹介をした。 「これから学園祭まで何回か来ることになると思うけど、よろしくね」  人形のように整ってる顔が少しだけ綻ぶ。真顔の冷たい印象をかき消すような、年相応の笑顔を浮かべていた。  壮は目の前に差し出された手に手を重ねて、握手する。 「こちらこそ、至らない点もあると思いますがよろしくお願いします。こんなに有名な方に来ていただいて、生徒のみんなもすごく喜ぶと思います」  壮も顔に笑顔を貼りつけて、そういった。  学園祭がすぐそこなのにまた対策を練らなければいけないことが増えた、という不満が大半だが、そんなこと言っても決まったことは仕方ない、と不運な自分を励ます。 「記憶に残る学園祭にできるようにがんばるよ」  黒澤は壮の事をみてにっこりと微笑んだ。  壮の右手の薬指を一見していたことに壮は気付いていなかった。

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