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 裏門へ行くと黒いアウディが止まっていて、後ろの扉が開いた。 「どうぞ、壮くん」  サングラスを外した黒澤が出てきて、壮のエスコートをするように車の横に立つ。 「……ありがとうございます」  壮が乗り込むと、すぐ隣に黒澤。運転席にはマネージャーの橋場が座っていて、扉が閉まったことを確認するとゆっくりと走り出した。 「じゃあこれで。車はすぐそこのパーキングに停めておくので。場所はまた連絡いれときます」  そう言って橋場は車に乗り走り去っていった。  学校から近くのカフェ、と黒澤は言ったはずだか、実際ついたのは少し離れた繁華街だった。見た目はボロボロなビルだが、中に入りカフェがある階層に着くと、見た目からは想像つかないようなお洒落な空間が広がっていた。 「ここなら暗いし、バレにくいんだよね」  黒澤は慣れ知った場所なのか、どんどん先に進んでいき、店内にいる店員に話しかける。店員も慣れたように店内の奥へと案内していく。 「VIPルーム……」  店内のこれでもかというほど奥に進むと、スライド式の自動ドアがあり、そこにはVIPの文字があった。 「外からは暗証番号があるから、この中はみんな礼儀をわかってる人しか入れないんだ」  壮は見たこともない空間に持っていた通学用の鞄を抱きしめていた。取って食われる訳でもないのに、非日常が盛り沢山すぎて身を守るように鞄を抱きしめる。 「ごゆっくりどうぞ」  自動ドアの向こうで店員は頭を下げていた。  VIPルームの中にはまた3部屋くらいの部屋があり、黒澤は一番奥の扉に手をかけた。 「はやくおいで」  慣れた様子でエスコートされる。後ろから押されたように壮は小走りで黒澤の開けた扉に入っていった。 「壮くんは甘いの好き?コーヒーとジュースならどっちが好き?」  黒澤は壮の隣に座っていて、顔を覗き込みながらそう聞いてくる。  壮は椅子に浅く腰掛けていた。 「あ、コーヒーで……」  こんな見るからに高そうなカフェに高校生を連れてくるか?芸能人だから仕方ないのか?これなら学校の生徒会室の方がよほど居心地がいいし、話も進むのに、なんて思う。コーヒーくらいなら万が一黒澤が逃げ出しても壮の持ち金で払えるだろう、と思っての注文だった。 「甘いのは嫌い?」  帽子もフードも脱ぎ、壮ににっこりと笑いかける。 「嫌いじゃないですけど……」  そういうと黒澤はスマートフォンを操作し、数分経つとテーブルにスマートフォンをおいた。  じーーーっと音が出るくらい黒澤は壮のことを見つめている。 「壮くん、綺麗な顔してるね。モテるでしょ?」  顔のパーツをひとつひとつ見るように、黒澤は凝視してくる。視線をはずして、壮は自分の手元をみる。 「男子校なんで」 「壮くんは恋愛対象は女の子だけなの?」  なに聞いてくるんだ、と黒澤に視線をやると、黒澤はにこっと笑みを浮かべる 「俺、壮くんの事が気になってるんだけど、よかったら付き合わない?」  え?と声が出たかもしれない。なにを言ってるんだろうか、と頭が処理に時間がかかる。付き合う?この芸能人と俺が?なんで? 「別に急いで返事しなくていいから、ゆっくり考えてくれる?」 「え……いやいや」  断ろうとすると扉のノック音が聞こえた。  入ってきたのは店員で、トレイの上には飲み物が2つとケーキがふたつ置いてあった。 「さっき携帯で頼んだんだ」  黒澤はそういい、壮の前にケーキとカフェオレを置いた。コーヒーを頼んだはずなのに、と目をやると、黒澤はにっこりとわらう 「コーヒーあんまり好きじゃないでしょ。ここのカフェオレ美味しいから飲んでみな。心配しなくてもちゃんと俺が払うから」  なんでコーヒーがあまり好きじゃないってわかったんだろう……。壮は礼を言って、カフェオレに口をつけた。すこし甘めなカフェオレは壮の好きな味だった。 「ケーキも食べな、ここの美味しいんだよ」  フルーツのたくさん乗ったケーキを見る。フルーツがキラキラとしていて、とても美味しそうだった。 「いただきます……」  店員がいなくなり、静かになった室内に小さな壮の声が響いた。  

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