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学園祭実行委員が生徒会室に集まっていた。
黒澤が正式にくることが決まり、用意するものや当日の流れを生徒会と実行委員で確認する。噂には聞いていたみたいで、実行委員のメンバーはほんとに来るんだ!なんて話している。
「学園祭まであと1ヶ月とすこし。今回は外部からの来客が少ない分、混乱もまだ少ないはず。だけど、気を引き締めてみんなが楽しめるように頑張って行こう」
ありきたりな締めの言葉を言い、集まりを終わらせる。
黒澤と共にカフェで過ごしてから数日。正式に黒澤の事務所から予定表なるものが届き、それを基に当日の予定を組み直す。
SNSはもう他の話題で賑わっているが、未だに校門には少しだけ人が溜まっている。それは壮目的だったり、一縷の期待を込めた黒澤のファンだったり、他の顔の整った生徒待ちだったりと、人数は減ったものの熱心なファンが押し寄せていた。
「そーう、帰るかー?」
生徒会室から実行委員が出ていったのを確認して、伊織が入ってくる。
伊織はもう顔パスなのか、会議以外の時に顔を出しても誰もなにも言わなくなっていた。
「うん、これだけ片付けたら」
会議で使った書類を片付けながら言うと、伊織はポケットからキーケースを取り出す。
「んじゃあ取ってくるわ」
一応バイク通学は許されていない為、伊織は口には出さずに言う。
「じゃあいつもの所で待ってるよ」
伊織を見送り、窓から校門に目をやる。
「今まだいる子って熱がある分危ない子も多いからね」
横から加賀がそういう。同じく外を見て、窓をトントンと叩く。
「ちょっと前まではミーハーとかも居たんだろうけど、いま居るのは本気かもしれないから、冴島くん気をつけてね」
心配してくれてるのか、声のトーンがいつもより静かだ。
壮は書類をまとめてファイルにしまう。
「うん、ごめんね」
心配かけて、と続けると、加賀はいつも通りにっこりと笑った
「ううん、僕も冴島くんの事好きだから、なるべく傷ついて欲しくないだけだよ」
僕も、というところにすこし引っかかりを感じたが、携帯がメッセージの通知を知らせる音が鳴り、加賀はあ、と声を上げる。
「永妻くんじゃない?こんな暑い中、待たせたら可愛そうだよ」
書類を綴じたファイルを加賀が取る。
片付けとくね、と続け、ファイルを持ち部屋の隅にある鍵付きの棚に手を伸ばしている。
「ああ、ごめん。待たせるのもあれだから行くよ。またあした」
通知を見ると、たしかに伊織からで、着いたよの連絡かと思って急いで荷物をまとめる。
「またあしたね」
加賀はいつもどおりにっこりとわらって壮を見送ってくれた。
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