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学園祭まで2週間を切った。
あれから壮と伊織は少しずつ時間をかけて、仲を修復していって今では元どおりの関係へと戻っていた。
「りんごもできたし、鏡も作ったし、花の籠も作った……小道具はもう全部終わりかな?」
この数週間で作り切った白雪姫の小道具を見て、鹿島はそう言った。段ボールや絵具、100円均一で売っているものを駆使して作った劇の小道具はそれなりの見た目にできあがった。
「冴島も生徒会と兼任おつかれさん」
「何回か抜けたりして悪かった」
鹿島は気にしてない風に、全然いいよーと返してくる。
終わった学園祭の準備、他の係の手伝いをしようと周りを見回す。
こんなに早く終わったのは小道具のふたりだけみたいで、大道具や衣装担当は今も忙しそうに作業していた。
「手伝おうか?」
そう声をかけた時、タイミングよく放送が校内に鳴り響く。
3年、冴島。至急職員室へ。と簡潔に呼び出され、壮は何かあったのか、と声をかけた大道具の係に謝り、教室を出ようとする
「壮、帰りは送るから」
教室から伊織の声がかかり、ああ、ありがとう、と伝えて、教室を後にした。
「当日の相談をしたいそうだ」
職員室へ向かうと、学年主任の先生が壮にぼそっと告げる。その言葉に呼ばれた理由がわかった。
「お久しぶりです、お忙しい中ご足労かけまして」
すこしだけトゲのある言い方をしてみる。
学年主任の開けた、職員室のすぐ隣の進路指導室には黒澤がいた。
「あれ、何か怒ってる?」
わざわざ、職員室にいる先生たちではなく、自分を呼び出したことにすこし怒りを覚える
「学園祭の準備もあるんですけど」
黒澤は黒色のパンツに白のTシャツ、薄手のカーディガン、というラフな格好で窓際に立っていた。
「今日は壮くんにしか出来ないお願い事なんだよ」
「なんですか……」
そう聞くと、黒澤はにっこりと笑顔を浮かべる。
「学園祭の舞台前の様子をカメラに撮ってほしいんだ」
有名なメーカーのカメラを取り出して、そう笑う黒澤に、壮は開いた口が塞がらなかった
「……俺、忙しいんですけど……」
生徒会の仕事に、自身のクラスの出し物。見回りや、何か起こった時の対処など、やることはたくさんある。
「1時間くらいでいいよ。それにカメラを回すだけで、実際は俺と話したりするくらいだし」
だめかな?なんて聞いてくる黒澤。
「ダメというより、時間無いですよ」
時間的に無理だという事を伝えると、黒澤はにやっと笑いを浮かべる。
瞬間にわかった。権力を駆使して、上を味方につけたのか……。
「なんで俺なんですか……」
折れた、とわかったのか黒澤はニヤニヤとし、カメラを壮に向けてカシャ、と一枚写真を撮る。
「いま一番俺の自然な顔を引き出せるのが、壮くんだからかな」
不満気に見つめると、黒澤はよろしくね、と満面の笑顔で言った。
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