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「どうかした?」  黒澤と別れ、教室に戻るとみんなが帰る支度を始めているところで、支度が終わっていた伊織と共に校舎を後にしたところだった。  黒澤に頼まれ、学園祭当日のことを思うとため息が溢れる。それを聞いていた伊織に声をかけられた。 「学園祭のことでね」  それでなくても大変な行事なのに、どうして黒澤は俺なんかに頼んだのだろうか、と壮はまたため息を溢す。 「生徒会長だからね、そーちゃんは」  がんばれ、と応援してくれる伊織に、おーと生返事をする。 「学園祭さ、昼飯一緒にたべれる?」 「うん、昼休憩はもぎ取るつもり。昼はすぎるだろうけど」  ちょうど昼ごろにある黒澤のライブのせいで遅れることは確実だった。 「んじゃあ一緒に食べよ、約束」  伊織はそう言い、小指をさしだした。 「別にそんな約束までしなくても」  なんでそこまで?と思いながら、壮も小指をさしだし、小指同士が絡まる。 「ちゃんと約束したら、壮は守ってくれるでしょ」  伊織は笑う。えくぼをみせて、すこし寂しそうな笑顔だった。  伊織を怒らせたあの日から、すこしずつ伊織がおかしい、と感じる事が多くなった。ほんの些細な事で、壮じゃないと気づかないような事だが、なにかが違う。いつもの明るいだけの伊織じゃなく、奥になにか塞ぎ込んで、表向きだけ明るい顔をしているような、そんな感じだった。 「うん、守るよ、ちゃんと」  なんだそれ、と冷やかす事もできる。  でもなんだかそう答えるのも違う気がして、ちゃんと返した。  すると、伊織はすこしだけほっとしたような顔を見せた。  

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