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高校生活は順調だった。受かったのが奇跡と周りに言われ、レベルが違う事を初めから自覚しているので勉強も真面目にやり、バイトも始めた。
男子校というのもあり女子との接点は合コンが主で、それに誘われることもしばしばあった。カモフラージュはしてきたつもりだ。
「永妻くんって冴島くんのこと好きでしょ?」
そう言われた時、飲んでいたお茶が気管に入って咳き込んでしまった。そしてしまった、と質問してきた男の顔をみると、眼鏡の縁に手を添えてにやりと笑みを浮かべている。
「……なんのこと」
もう遅いか、と思いつつ否定をしてみる。
今日の昼は学校の中庭にあるベンチで食べていた。桜が満開で、風が吹くたびひらひらとピンク色が舞う。
三年生になり壮は生徒会長になった。そして伊織とニ年間たまたま同じクラスだった加賀も生徒会に入り、昼食はこの三人で取ることが多くなってきた頃だった。
2つ並んだベンチの端同士に腰掛け、壮が放送で呼び出されて数分後。特に話すこともなく、携帯をいじりお茶を口に含んだ時、加賀は狙ったかのように質問してきた。
「バレバレだね」
加賀はそう言い、箸を動かし始める。
バレバレだった?いつから?なんて頭の中で回るが、ひとつ思い当たることが頭によぎり、はあ、と空にため息を着く。
「綺麗だったもんね、冴島くん」
少し前にSNSで出回った壮の女装姿。それは去年の学園祭の写真で、女装コンテストという男子校ならではの催しだった。
壮は同級生の姉から借りた他校の制服と、スキニージーンズに大きめのTシャツという自身の私服に化粧とウィッグを付けて参加した。結果は壮の一人勝ち。二位三位の生徒は顔立ちこそは整っているものの男とわかるレベルの女装で、ステージに出てきた時笑いが起こっていたが、壮の時はステージに現れた瞬間から空気が変わった。身長は男としては標準。筋肉の付きにくい身体で、色白。綺麗な顔立ちはそのままで、良さを伸ばすためのメイク。体系こそは女性のしなやかさはないものの、顔と雰囲気だけみれば女性、それもかなり美形な女性だった。
「冴島くん、よく狙われるようになったもんね」
その言葉に眉を顰める。
最近増えてきた、冴島だったら付き合えるよな、という言葉。実際壮の周りに見知らぬ顔がいることが増えていた。
冴島だったら、その言葉に憤りを感じる。
こっちは壮じゃなきゃ、ダメなのに。ずっと待って、タイミングを見計らって失敗しないように、とずっと過ごしてるのに。ぽっと出の奴に取られるなんて考えたくもない。
「壮はずっと綺麗だ」
女装なんかしなくたって、と続ける。
加賀はそんな伊織の言葉にすこしだけ笑う。
「永妻くんも不器用だねー。女好きの顔しないと隣にいれないなんて」
その言葉にまた沈黙が走る。
「また喧嘩か?」
タイミング良く壮が帰ってきた。
漂う雰囲気の悪さにすこしだけため息をついている。
「違うよ、僕たち仲良しだから」
加賀がそういう。仲良しもなにも、ついさっきまで意地の悪いこと言ってたくせに、つい口に出そうになるが、お茶を飲んで流し込んだ。
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