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17時を過ぎても帰ってこない壮を壮の自宅で待ってると、ポテトサラダ に使うマヨネーズが足りない、と壮の母親がボヤいた。暇だから買いに行ってくるよと伝えると、ごめんねー、とお金を渡されたのが30分前だった。
近くのコンビニまでのんびり歩き、余ったお金はお小遣いに、と言ってくれた壮の母親の好意を頂き、少しだけ高いアイスを食べながら帰る。
汗だくになりながら、壮の家が見えて来た時、家の前に黒い車が止まってるのが見えた。
黒い車の中から昼間に学校で別れた壮が降りて来て、その後を続き運転席の扉が開く。
短い金髪頭で長身の男、それはついさっきコンビニの雑誌コーナーで表紙を飾っていた男だった。
「黒澤、琥太郎……」
男の名前を呟くと、男がゆっくりと壮の頭に手をやる。聞こえてたのか、と思うほどゆっくり、見せつけるようにぽんぽん、と頭を叩く。
そしてその手が頬に移り、唇を一撫でする。
伊織は何かいけない物を見てしまったかの様に視線を逸らし、すぐ近くの曲がり角に身を寄せる。
どくん、どくん、と心臓が痛いほど脈打ち、ざわざわと嫌な気配が背筋を走る。
まさか、そんな、とある一つの考えが頭を過ぎる。
遠い昔イヴァンをよく見ていた自分だけが知っている、イヴァンの想い人。そして、イヴァンの近くにいたからこそ知ってる、男のイヴァンを見る目が愛しい者を見る目だという事を。
そして、遠い昔みた光景と全く同じ光景がいま、目の前に広がっていた。景色などは違うものの、壮と黒澤、イヴァンとあの男の姿形が全く同じものだった。
この世界にも、あいつが来た。
イヴァンの心を奪って、そのくせに最後まで守りきらなかったあいつが。
すぐ隣を黒い車が通っていく。見るからに高そうなその車には黒澤が乗っていた。
唇を噛みしめ過ぎたせいか、すこしだけ鉄の味が口に広がる。持っていたアイスは地面に落ち、白い水たまりを作っていた。
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