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「加賀に着てもらった!」  ドレスを着て、ウイッグをかぶった加賀をクラスメイトに紹介する。いつも掛けているメガネは外しており、少しだけ化粧を施している。 「おー、まあまあだな」  いくら小柄だと言っても加賀も男。  見違えて美形の女に変身!とはならなかったが、ドレスはちゃんと着ることができている。 「イヤホンで電話繋げながら出てもらうから。セリフはこっちで言うから心配すんな」  加賀にそう言うと、不満げながらもイヤホンを耳に装着する。  もうすぐ劇が始まる。小道具と大道具をセットして、みんなで肩を組む。 「これ終わったらみんなで打ち上げな」  打ち上げ、その言葉にみんなが歓喜の声を上げる。  高校最後の文化祭、壮が横にいないことが少しだけ寂しいが、仕方がない。 「じゃ、いくぞ!」  小さな声でおー!とみんなが声を出す。  そして、劇が始まった。  劇は可もなく不可もなく。仲のいい他のクラスが冷やかしで来ていて、盛り上げてくれたおかげでギャグチックに作られた白雪姫の舞台は笑いに包まれて終わった。 「んじゃあ、永妻くん」  真っ黄色のロングドレスを着たまま、加賀はにっこりと笑顔を浮かべた。  唯一台本通りに行かなかった加賀のツンツン白雪姫。結果オーライと言えば響きがいいが、早く終わらようとする加賀に振り回されたのも事実だった。 「次はこっちの番ね」  壮の前じゃ絶対見せないような笑顔で加賀は言う。  こちらの言い分を先に聞いてもらって、それを叶えてもらってる以上文句は言えない。 「ああ、わかってるよ……」  その言葉を聞いてから、加賀は要求を指折りながら伝えてきた。  校内のゴミ掃除から始まり、校門前で列を作ってる外部からの招待客の対応、あとは校内の揉め事対応。  思いの外少なかった要求にほっとする。  あと心にすこし引っかかっていたことを加賀に伝える。 「あのさ、俺がやれることはやるから、壮はゆっくりさせてやってよ」  少しだけ恥ずかしくて、地面に目線をやりながらそう言うと、はぁ、と今日何度聞いたかわからない加賀のため息が返ってきた。 「当たり前」  ズバッとそれだけ言うと、加賀は黄色のドレスをひらつかせて廊下を歩いて行った。

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