43 / 47

15

 時間は二時を回っていた。  休憩を挟んでは、校内の掃除をしたり、雑用に駆られて学園祭を楽しんだ気は全くしない。  壮から連絡が来る事はなかったが、高熱で寝ている姿を見ているから催促する気になれなかった。 「もう学園祭は終わるので入場できませーーん」  学園祭が終わりに近づき、校門の前の列に声をかける。入れませんの言葉に諦めて帰る人もいれば、何で入れないの?と少しだけ怒ってる人もいた。その人たちを笑顔でやり過ごしていく。 「ママー……」  幼い小さな声が聞こえた。  声のした方、校門のすぐ中を見ると小さな子供が門にへばりついてキョロキョロと辺りを見回していた。 「どうかした?」  眉をへの字に歪ませている子供に声をかける。なるべくびっくりしないように、優しめの声で。  伊織の顔をみた子供はみるみる内に涙を瞳に溜める。 「ママ居なくなっちゃったか?」  校門の中に入り、小さな子供と目線を合わせる。子供はひっくひっくと泣きながら頷いた。手を伸ばすと胸の中にすっぽりと収まった。 「だいじょーぶ。ママもきっと探してくれてるから」  怖がらせないように、優しく、ゆっくりと。  顔を覗き込むと涙がボロボロと溢れており、それを少しだけ拭ってから子供を抱き上げた。 「ほら、周りにはいないか?」    抱き上げたまま立ち上がり、辺りを見回す。  高くなった目線に子供は必死に辺りをみて母親を探す。  校舎の中には……。と何気なく校舎を見る。生徒会室の窓を見るのはもうクセになっていて、一番にそこに視線を向けた。 「黒澤……」  窓から少しだけ金髪頭が見えた。見たくもない、綺麗に染まった金色。あんな頭の色で壮と関わりがある人間なんて、黒澤ひとりしかいない。 「あ、ママーーー!!!」  耳元で子供が大きな声をだした。そして振り返ると、抱っこ紐をした小柄な女の人が伊織の方へと向かってきていた。安堵の表情と額から流れ落ちるほどの汗に、この子の母親だと確信する。 「もう迷子にならないようにな」  子供をゆっくりと下ろしてやると、母親の方へと走りだした。母親も目線を合わせて子供も話している。  見つかってよかった、と安心すると共に、先程の金髪頭が蘇る。生徒会室にいた黒澤、そこには体調の悪い壮がいる。  これは生徒会室に行っていいのか、もしかしたら壮は黒澤と会う約束をしていたのかも知れない。  心臓がどくどくと嫌に動く。    

ともだちにシェアしよう!