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「それは、兄さん次第だ」
「っ! うぅっ!」
佑樹を守る算段がつくまで楓には逆らえない。歩樹は自分にそう言い聞かせて身体の力を抜いていく。
「やっと分かったみたいだな。ここに男を咥え込んで悦がるようにしてやるよ。時間なら、たっぷりある」
「っ!」
突然律動が開始され、歩樹は痛みに戦慄 いた。くだらないプライドなんて、この際捨てなければならないと頭の中では分かっていても、媚びた声を上げるのだけは無意識の内に我慢する。
「……強情だな」
「っ……うっ」
散々中を楓に穿たれ痛みが愉悦に変化しても、従順に彼を受け入れながら、開いた口から嬌声を上げることだけは気を失うまでしなかった。
***
「目ぇ覚めた?」
「ん……」
「喉渇いただろ」
「……ああ」
頭の中がぼやけているのは発熱のせいだろう。何が自分を襲ったのかを覚えていないわけではないが、今更動揺してみたところで何かが変わるわけでもない。
差し出されたペットボトルを取ろうと思って起き上がると、体中へと痛みが走り、歩樹は僅かに眉根を寄せた。
「大丈夫?」
心配そうな声が聞こえるが正直顔も見たくない。
なるべく視線を合わせないように水を一気に飲み干すと、とりあえず部屋を出ようと考え歩樹は床に足をついた。
見合いをすっぽかした事を、早く相手に詫びねばならない。
「どこ行くの?」
「っ!」
楓の声が聞こえると同時に歩樹の膝がガクリと曲がり、床に崩れる寸前のところで長い腕に抱き留められた。
「まだ動くのは無理だ。大人しく寝てろ」
無理するなと続いた言葉に歩樹は思わず楓を見る。
「お前、誰のせいだと……」
「俺だよ。でも兄さんが悪いんだ。抵抗しなきゃ少しは優しく出来たのに」
いけしゃあしゃあと言い放ちながら歩樹をベッドの上に倒すと、腹の辺りを跨いだ楓がパジャマのボタンに触れてくる。
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