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高校一年生の歩樹と中学二年生の楓。
映像のように見ている自分のきっとこれは夢だろう。
距離を置こうと思ってはいたが、仲の良い兄弟ではあり続けたいと願っていた。高校へと入った自分のサイクルが変わった為に、接触自体は減ったけれども、それでも大事に思っている。
そんな風な関係にしたいとこの時歩樹は望んでいて、実際思い描いた通りの状況になっていた。
「兄さん、ポテチ食いたい」
「ん、分かった。CMになったら取って来るから」
たまに離れの自分の部屋で一緒に好きな映画を見て、大概楓に甘い歩樹は彼の些細な我が儘を聞く。
そんな、表面上は変わりのない日々。
歩樹の心を脅かしていた欲情も――当時の歩樹は未熟だったため、実際どうこうしたいなどとは具体的に思っていなかった。
ただ、慎重な性格がゆえに防衛線をいち早く張ってしまっていただけなのだ。
「これ、マジ面白いね。久々に当たった」
「ああ、そうだな」
嬉しそうにこちらを向く中性的で綺麗な顔に胸がドクリと音を立て、歩樹は慌てて立ち上がる。
「コンソメでいいか?」
「うん、ありがとう」
純粋な笑みを向けられれば、悪い事などしていないのに落ち着かない気分になって、歩樹は自分のそんな感情をいつしか持て余すようになった。
自分は病気なのかもしれないと考えもしたけれど、相談する相手もいないし、もとより弱みは見せられない。
(大体、弟相手にそんなこと)
考える方が間違えていると頭ではちゃんと知っていたし、楓や佑樹にとって自分は誇れるような兄でなければならないと常に思っていた。
このまま自分が上手くやれれば、何事もなく大人になり、その頃には今の感情もきっと想い出になる筈だと。
「やっぱコンソメが一番だよね」
手渡した袋を開け、ポテトチップスを食べる楓の顔をチラリと見遣りながら、もう少し距離を置かなければならないと歩樹は内心決意をする。
「そうだな。楓、俺にも一枚」
口許ばかりに目がいくなんて、いよいよ自分は普通ではないと認めざるを得なくなった。
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