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「……ありがとう。本当に困ったら、相談させてくれるかい?」 「それは勿論……でも、今は本当に大丈夫ですか?」 「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう」  真摯な瞳に心が揺らぐが、歩樹は無理に笑みを作ると貴司の頭をそっと撫でた。  半年間、歩樹は貴司を良く見ていたが、彼もまた、大変な中、自分のことを見ていたのだと今初めて実感する。  頑張っているつもりなど当時は全く無かったけれど、自分に付いたイメージだけは壊さぬよう、自然に気を張っていた。それが辛いと思ったことなどこれまで一度も無かったが、彼は彼なりに自分のことを心配していてくれてたのだろう。 「変なこと言っちゃってごめんなさい。俺、今は携帯持ってないけど、持ったら必ず連絡します」 「ああ、待ってる。貴司に心配されるくらい顔色が悪いんじゃ、ホントにマズいよな。これからはできるだけ無理しないようにするよ」 「ご飯、ちゃんと食べてくださいね」 「分かった。貴司も彼ときちんと話して、早く仲直りするんだよ」  さりげなく話題を変えれば、少し寂しげな顔をしながらも貴司はコクリと頷いた。 「じゃあまた」  別れ際、軽く握手を交わしていると、指も細くなった気がすると心底心配そうに言われて歩樹は苦笑いをする。 「ごめんなさい……俺」 「分かってるよ。そんな顔させちゃって俺こそごめんな。会えて嬉しかった。連絡。本当に待ってるから」 「俺、絶対連絡します。だから……あっ、アユ?」  握手の先、フラリと視界が揺らめいた。 「アユっ!」  まずいと思う。立っていなければならないのに、足元がふらついて、意識をうまく保てない。 「悪い。ただの立ちくらみだから、誰も呼ばないで、ちょっと横にならせてくれ」  どうにかそれだけ告げた歩樹は、ベンチへと座り瞼を閉じる。  慌てたような貴司の声が聞こえてくるが、それもすぐに遠くなり……まるで電源が切れるみたいにそこで意識がプツリと途切れた。

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