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(ど……して?)  執拗な楓の仕打ちに目頭がジンと熱くなる。  嫌いなのは分かっているが、こうまでされる謂れはない。だけど何故かと楓に問えば、話はいつもはぐらかされ、彼の脅しや暴力によって容易く屈服させられる。 「逃げようなんて考えるなよ。兄さんは、後継ぎなんだから」  口を少し離した楓に低い声で囁かれ、言葉を返す隙もないまま、また唇を塞がれた。 「んっ、んぅっ……」  今度は優しくなった接合に再び頭が混乱する。そうまでして自分を縛る理由も全く分からなかった。 「挿れるよ」 「や、やめっ……ゔぅっ! んっ……うぅっ!」  短くそう告げると同時にさきほど散々穿たれた孔を一気にペニスで貫かれ……限界を超えた歩樹の身体は情けないほどにガタガタ震え、酷い吐き気に襲われる。 (やめてくれ、もう……)  もうたくさんだ。このまま一緒に暮らすなんて、絶対無理に決まっている。  逃げないと何度も約束させられ、自分の持つ恋情さえも見抜かれた上で利用され……捌け口のようにいたぶられる毎日にはもう堪えられない。  なにより、このままでは命を預かる大切な仕事に必ず支障が出るだろう。 「んっ……うっ!」  意識が白く霞んでいく。 (誰か、助け……)  例え心の中とはいえ、助けを求めてしまう程に歩樹の心は不安定になっている。 「……兄さん?」  ようやく解放された唇で酸素を必死に取り込んでいると、頬をペロリと舐められてから、強い力で抱き締められた。 「泣くなよ」  どこか遠くで響く声。 (なに、言ってるんだ? 俺は、泣いてなんか……) 「ひっ、ああっ!」  歩樹の思考を遮るようにまた律動が始まって、押し出される喘ぎ声を自分自身でも止められないまま身体がどんどん追い詰められる。 「やっ……あっ、ああぅっ!」  背中を大きくのけ反らせながら絶頂へと達したところで意識は闇へと吸い込まれ、まるで糸が切れたみたいに身体がガクリと崩れ落ちた。

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