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「ぐっ……ん、んぅっ!!」  グチュグチュという卑猥な音が空気と鼓膜を震わせて……視線の下で苦しげに喘ぐ歩樹の姿に煽られた楓は、数回抜き差ししただけで彼の喉の奥へと射精した。 「うっ……うぅっ」  咳込む歩樹の目尻をなぞれば、涙が僅かに指先を湿らせる。 「綺麗にしろよ」  ペニスを引き抜きそう命じると、表情を消した彼が楓の尿道口へと唇をつけ、残滓をチュッと啜りはじめた。 「兄さん、俺から逃げたい?」  労るように頭を撫でると、(いぶか)しむようにこちらを見上げて首を小さく横に振る。 「嘘、吐くなよ」 「……じゃあ、なんて答えればいいんだ」  珍しく、反論してきた弱い声音に答えることは出来なかった。  彼にしてみれば逃げたいと言えば酷い仕打ちを受けるだろうし、違うと言えば嘘にされる。  理不尽なことこの上ない問い掛けだと言えるだろう。 「まぁ、後継者として戻ったからにはどっちにしても逃げられない。ってところか。告発する勇気も無いし、助けてくれる人もいない。可哀想にな」  殊更優しく囁きながら、唇を指でそっと拭うと、抵抗せずに開かれたそこへ指を二本差し入れる。 「んっ、ふぅっ」  全ては自分の思い通り。激情のままに奪いはしたが、結果的には上手くいった。  この先、真実を知られさえしなければ、歩樹はここから動けない。もし仮に知ってしまっても、打つ手はあるから問題ない。 (なのに……なんで?)  胸の奥がモヤモヤする。従順になった歩樹の姿に満足している筈なのに。 「ん、ふっ……うぅっ!」  口腔を指で蹂躙しながら足で股間を何度も突くと、逃れようと身じろぐ姿にまた挑みたくなるけれど、残念ながら時間がない。 「時間だ。それ……ちゃんと落ち着かせてから帰れよ」  指を引き抜いてそう言い放つと、一瞬だけ間を開けて、「ああ」と掠れた声が聞こえ、床にペタリと座った歩樹がやけに小さく見えた楓は、なぜか直視が出来なくなってそのまま部屋を後にした。  まさか、ここまで追い詰めた嬲った相手が、まだ諦めていなかったなんてこの時楓は気づけない。  否、散々奪ってきた癖に……強さを失って欲しくないと心のどこかで思っていたから、矛盾している気持ちの狭間で無意識に甘くなっていた。

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