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「こんなに垂らして……兄さんはだらしないなぁ」 「ふぅぅんっ!」  尿道口に爪を立てられ先走りを掬われる。 「ここも埋めて欲しいんだろ?」 「ん、んぅ、ふぅぅっ!」  撫でるように亀頭を弄られ達しそうになった刹那、指が急にペニスから離れ口枷を取り払われた。 「あ、うぅっ……かえっ」 「さっきから煩いから、出ろ」 「え? あぁっ」  耳に何かが宛がわれる。バイブのような音がするが、それが何かは分からない。 「兄さんの携帯、何回も佑樹から電話が来てる」 「そん……やめっ……無理だ!」  その言葉に、一気に思考が覚醒し、思わず声を張り上げた。こんな状況で電話になんて絶対に出られやしない。 「可愛い弟に、喘ぎ声を聞かせてやれよ」 「……ねがいだから、止めっ……」 「兄さんが佑樹に変な根回ししたのが悪いんだろ。ちゃんと責任取れよ」  愉しそうに囁く声に絶望的な気持ちになった。 「ほら」  通話ボタンが押される音が耳の近くで聞こえた途端、良く知っている弟の声が歩樹の耳へと入ってくる。 『兄さん?』  ハンズフリーにしたらしく、携帯から聞こえる声はやけに大きく部屋に響いた。 「佑樹……どうした?」 『どうしたって……聞きたいのはこっちだよ。電話に出ないから心配したんだよ!』 「ごめん、立て込んでた。大丈夫だから……」 (早く電話を切ってくれ)  漏れそうになった泣言を、寸での所で飲み込んだ。 『平気なら良かった。あと、言われた通り楓兄さん呼び出したけど、すぐに帰っちゃったんだ。引き止められなくてゴメン。もしかして……楓兄さんとなにかあったの?』 「いや……そういう訳じゃっ……ぅっ!」  体内で動くローターが不意に震動を強めたため、歩樹の身体は大きく跳ねて、取り付けられたクリップが二つ同時に胸から外れてしまった。 「……っ!」  歯を食い縛って声を上げるのはなんとか回避出来たけれど、このまま通話を続けていれば、怪しまれてしまうだろう。

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