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「やっ! あぁっ……くぅっ!」  腕に力が入らなくなって上半身は床に倒れるが、腰は楓が掴んでいるため、尻だけを高く掲げるような体勢になってしまう。 「キツイな。でも、兄さんのココ、喜んでる」 「やっ、やめっ……痛いっ! ……あぁっっ!」  更に、戒められたペニスを掴まれ、歩樹の身体は大きく揺れた。 「ホントマゾだな。嫌いな相手にここまでされたら、普通萎えそうなもんだけど」 「んうっ」  そのままペニスを緩く扱かれ、快楽を少しでも逃そうと歩樹が床に爪を立てると、それを覆うように上から左掌を掴まれる。 「中、いつもより奥まで入って気持ち悦い? どうせなら動かしてやろうか」  耳朶へと舌を這わされて、声を出すことも出来なくなった歩樹は首を横へと振る。楓のペニスに押される形で奥に入ったローターが、もしそこで動き出したりしたら。 (また、分からなくなる)  今はそれが一番怖い。追い詰められ、見せてはいけない本音を零してしまうことだけは絶対に許されない。 「変態」  蔑むような楓の声。同じ言葉は何度も言われたが、その度に胸がギュッと痛む。好きな相手に罵られるのは想像以上に辛いものだと、彼とこういう関係になって本当の意味で理解した。 (でも、下手に情を掛けられるよりは)  叶わぬ思いを断ち切るためにはちょうど良いのだと歩樹は自分に言い聞かせる。  だけど、ならばなぜ、彼は時折僅かな情を掛けるような真似をするのか? 今だって、身体を包み込まれていると歩樹が感じてしまうのは……都合の良い錯覚だろうが、こんな風にされてしまえばつい縋りたくなってしまう。 「兄さん辛い? 楽になりたい?」  囁く声に労わりの色が滲んでいると感じるのも、全て願望が見せた夢で、現実ではありえない。あってはいけない。 「……イキたい」  目隠しが作る闇の中、過敏になった身体と心が解放を求め燻っていて、おかしくなってしまいそうだ。 「ん?」 「イかせ……て」  擦り切れてしまう寸前で、どうにか意識を繋いでいるが、いつまで保つかは分からない。既にもう、おかしくなっているのかもしれない。

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