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「昨日から、どこに行ってた?」 「……どこにもっ、行ってない……から……」  見えすいた嘘だけれど、言う訳にはいかなかった。楓は全てを知っていると母親が言っていた。その上で、聡い筈の楓が今も強い怒りを消せずにいる。 (だから、今俺に出来ることは……)  気が済むまで受け止めることだ。  もう大人なのだから、付き合う必要性はないと思った以前の自分とは随分変わってしまったけれど、それが今の歩樹に出来る最善の選択だった。 (だからこそ……言えない)  もし告げてしまったら、憐れみからの行動だと勘違いさせてしまうから。 「ホント強情だな。だったら……してるって言えよ。ちゃんと言えたらイかせてやる」 「え? や、ああっ!」 「ほら、早く」  意味を理解出来ないうちに律動が開始され、歩樹は前に逃げを打つけれど、上から抑え込まれているから抵抗にすらならなかった。 「あっ、あっ……楓、やめてっ……やぁっ!」 「やっぱキツいな」 「ひっ、あうっ……」  ズルリとペニスを引き抜かれ、すぐにアナルに何かがツプリと差し込まれる。 「やっ、あっ……うぅ!」  中に注がれた液体に、小さく身体を震わせていると、間髪入れずに再度貫かれ快感の余り打ち震えた。 「……言えよ」 「かえ……で……」  耳に入る楓の声に怒気は感じられなくて……だから歩樹の頭の中は一層混乱し始める。 「うっ! あ、あぁっ!」 「大好きだよな。深いトコまで埋められんの」 「ち、違っ、俺は……」 「こんなにしといてまだ認めない? イキたいなら素直になれよ。ココ外して、奥突いて、精液出させて欲しいって―してるって、言えよ」 「やっ……ひっ、ああっ!」  低い声音で囁いた楓に陰嚢を強く揉み込まれ、膝の力が抜けるけれど、楓の腕が支えているから倒れる事は許されない。 「言えよ」  焦れたような声に弾かれ、首を捻って背後を見ようとするけれど、目隠しのある状態では、彼が今、どんな表情をしているのかは分からなかった。

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