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 今の自分が出来ることはそれしか無いと思っているが、それでは解決しないというのも歩樹には良く分かっていた。 (焦らないことだ)  待つ姿勢も大切だ。闇雲に動いてみても、良い方向にはきっと向かわない。長く続いた憎悪の念は、そう簡単に治まるものでは無いのだから。 『そうよ。貴方と佑樹は一樹(かずき)さんの子供じゃない』  公園へと入った歩樹は自転車を停め、ベンチへと座り木々を見上げて息を吐く。 (そうだ。俺達は、父さんの子供じゃない。でも、そんなの無い話じゃない)  結婚している女性が夫と違う男性の子を身籠る。  その場合、夫がそれを認めなければ、生まれた子供は戸籍上、夫婦の間にできた子供だと記載され、法律上の手続き無しには変更することが出来ない。  よくあるかは分からないが、仕事柄、全く聞かない話じゃないから、それほどショックを受けることなく母の話を聞くことが出来た。  多感な時期に聞いていればどうだったかは分からないが、今の年齢になってしまえば、騒ぐような話ではない。 (冷めてるな)  家族という名の温もりは、祖母に与えて貰ったけれど、両親には貰ってないから当然と言えば当然だ。  祖母と血の繋がりが無いのは淋しいことだと思ったけれど、自分の力が及ばない場所に腹を立てても仕方がない。それよりも――。 『楓は、あの子は……』  父親とその妹……歩樹にとっては叔母にあたる人物との間に宿った子供なのだということを、聞いた時の衝撃の方が遥かに大きなものだった。  調査結果を読んではいたが、にわかに信用できずにいたから尚更に。  母親からの話によると、結婚したのは病院の基盤作りの為であり、最初からそこに愛情などは存在していなかった。それでも母は夫婦になろうと頑張ったのだと言っていた。  例え敷かれたレールであっても、結婚した以上はここで幸せな家庭を作ろうと……多忙な父が家にいる時にはなるべく一緒にいるようにした。  二人で過ごして行くうちに、生まれる愛もあるのではないかと希望を持っていたのだと。 しかしそれは、思いもよらない形で裏切られる事となる。

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