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「大事な時にアイツを助けてやれなかったから、俺は多分恨まれてる。でも、楓は俺と一緒に住みたいって言ってきた。だから、このままじゃダメだって分かってるんだと思う。今、佑樹に言えるのはここまでだけど、嘘は吐いてないって誓うよ」
後半には憶測と共に願望が少し入っているし、隠している部分の方が大きいが、今話せるのはそれだけだ。
納得してくれるかどうか不安だった歩樹だが、どうやらそれは杞憂のようで、佑樹は小さく頷いてからこちらに向かって笑みを浮かべた。
「分かった。いつか……ちゃんと仲直りしたら、俺に全部話してくれる?」
「ああ、約束する」
「あともう一つ、兄さんは楓兄さんのこと好き?」
「え? ああ。楓のこともお前のことも好きだよ。当り前だろう」
突然の質問に、ドキリと胸が大きく鳴ったが、質問の意図を理解してすぐに歩樹は微笑み返事をする。
「なら良かった。多分、楓兄さん兄さんのこと、恨んでなんか無いよ。ここだけの話だけど、この前、兄さんに頼まれて、楓兄さんを呼びだしたでしょ? あの時さ、兄さんの居場所知らないかって、会うなり凄い剣幕で聞かれた。知らないって言ったらすぐに帰っちゃって、全然役に立てなかったけど、楓兄さんのあんな心配そうな顔、初めて見たから」
「……そうか」
「あ、兄さん信じてないでしょ」
「そんなことない。ただ少しビックリしただけだ。ありがとな、佑樹」
酷く動揺したけれど、それを表に出す訳にいかず歩樹は佑樹に笑みを向ける。
丁度その時、注文していた食事が席へと運ばれたから、会話は一旦終わったけれど、自分は何か大切なことを、見誤っているんじゃないかと思えてならなくなってきた。
それから、食事を終えた歩樹は佑樹のカラオケに付き合わされ、途中抜け出して亮を呼ぶと、彼が到着するのを待って、すぐに帰宅の途についた。
『もう、兄さんお節介なんだからっ』
佑樹は驚き怒っていたが、本心からではない事くらい顔を見ていればすぐ分かる。
真面目な亮は頭を下げて礼を言っていたけれど、いくら可愛い弟でも、夜勤明けに何時間も歌を聞かされては堪らない……と、困ったように一言告げれば、緊張はすぐに解けたようで、照れたようにはにかんだ。
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