98 / 119

98

 *** 「……ん、んぅ」  腹の辺りに違和感を覚え重い瞼を開こうとするが、疲労のせいか? なかなか視界を取り戻すことが叶わない。 「楓?」 「ああ、起こしちゃったみたいだな」  なんとか声を絞り出せば、聞き慣れた声音が鼓膜を揺らし、背後から回された腕にギュッと体を抱き締められた。  彼はいつ帰宅したのだろう? 歩樹自身、カラオケから帰ってすぐにシャワーを浴びて眠ったが、気配に気づかないなんてことは、ほとんどと言っていいほど無かった。 「寝てていいよ」 「ちょっ……なにをする」  労わるようなその言葉とは裏腹に、寝衣のズボンが下へとずらされる。阻止するように手首を掴むが、力が全く入らない。 「最近、寝つけにブランデー飲むだろ」 「お前……なんで……うっ」 『そんなことまで知っている』と、尋ねたかったが、耳朶(みみたぶ)に舌をざらりと這わされ上手く声にならなかった。  おおかたその中に何かを混入させたのだろう。意識は低く沈みそうなのに、触れた部分がやけに熱い。 「こうでもしないと……だろ」 「んっ……やめろ」  歩樹のしている抵抗など、全く意味を為さないばかりか、剥き出しになった尻を掴まれて上擦った声が漏れてしまう。 「もう勃ってる。気持ちいい?」 「ちがうっ、お前が」 「俺が? ブランデーに何か仕込んだって言いたい? まあ、そういうことにしもいいけど」 「それは、どういう……」  含みのあるその言い方に、歩樹は途端に不安になるが、緩く勃ってしまったペニスを直に掌で強く握られ、尿道口へと爪を立てられ、たちまち思考があやふやになる。 「いっ……うぅっ」 「大丈夫、気持ち悦くなるだけだから」  いつになく甘く囁く声。それと同時に尻から胸へと移動してきた掌の……中指と親指とで乳輪ごと尖りを摘まれ、人差し指で硬くなりかけた乳首をコリコリと擦られた。 「あっ、ああっ」  耳の中へと舌が入り込み、聴覚までを支配されれば、痺れたような愉悦が突き抜け、媚びたような喘ぎがでる。

ともだちにシェアしよう!