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「やっ……あ、うぅっ……ん」
しかも、ペニスをいたぶる掌は、話している最中なのに止まるそぶりがまるでないから、余計に思考が纏まらない。
「家族と呼べる存在が、佑樹と俺しかいないことも、それをどれだけ歩樹が大事にしてるかってことも、分かってる」
「かえで……やめっ」
「だから俺を告発できない。歩樹は誰にでも平等だから、特別な存在なんていないんだと思ってたけど、皮肉なことに家族だけは別なんだな」
「違う」
(そうじゃない!)
全く違うわけではないが、特別の意味が違っていた。だけどそれを言ってしまえば、もう戻れなくなってしまう。
(楓は、俺の気持ちを……知ってるんじゃなかったのか?)
知られているから余計に嫌悪されているのだと思っていた。
一緒に暮らし始めてから、徐々に変化する楓の様子に翻弄され続けているが、嫌われていると思い込むことで心の均衡を保ってきたのだ。
「最初、部屋でアンタが男を抱いてるのを見た時、どうしようもなく苛立った。なのに五年前、アンタを抱きたいって衝動に駆られた。最近まで、憎いからだと思ってた。いや、思おうとしてた。だけど違った。俺は……あの時から、アンタに欲情してたんだ」
「うっ……んぅっ、かえ……で」
苛む指は止まらない。落ち着いて考えたいのに、ペニスを扱くスピードが上がり、快楽に溺れ切った身体は自然と腰を揺らしてしまう。
「どうせ最初から兄弟じゃないし、俺がアンタを抱いた時点で関係はもう破綻してる。だから、今更世間体なんか関係ない。歩樹が俺を弟ととしか見てないことも分かってる。でも、だからって……」
「まっ……楓、違……んっ、んうぅっ」
一方的な楓の発言に何とか反論しようとするが、口へと指が突っ込まれ、言葉を紡がせてもらえない。
「抑えられない」
その内容とは裏腹に、ひどく落ち着いた楓の声音に、身体の熱に浮されながらも、歩樹は心を揺さぶられた。
『憎悪からくる激情を、勘違いしてるだけなのだ』と、言ってやりたいが、告げたところできっと白々しいだけだ。
「この前、歩樹がいなくなって、その間、ずっと考えてた。俺は結局どうしたいのかって」
「んっ……ふぅ……ううっ」
掴まれた舌を引き出され、飲み込みきれない唾液がシーツにポタリポタリと染みを作る。
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