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「なんで、お前は……」
「俺は、兄さんほど真面目じゃない。それに、兄さんほど……」
『繊細じゃない』という言葉は、胸の奥へと押し込める。
一人ぼっちになった時、楓には歩樹がいた。歩樹にとってもそうなのだろうが、立ち位置はかなり違っていて……彼の中では自分や佑樹を守ろうとする意識が高い。
踏み込んだ関係を築かず、誰にも平等に見えたのは、なんでも出来てしまうからではなく、きっと誰よりも繊細で、臆病だったからなのだ。
「あっ、やめっ」
体をずらした楓は歩樹のペニスを口の中へと含む。
閉じられないよう太股を掴み、上下に口をスライドさせると、弱々しい手つきで歩樹が楓の頭を掴んできたが、それは大した抵抗にならず、少し経つと腰が揺れはじめ、掠れた吐息が口から漏れた。
強制的に与えた愉悦と精神的な摩耗から、酩酊に近い状態にある彼が我へと返った時、どんな反応をするだろう。
(でも、きっと)
今のこのやり取り全てを無かった事にはされない筈だ。
(だから、これからは、ゆっくり……)
彼に伝える努力をしよう。血の繋がりも続柄も、個人を示す記号でしかない。
「俺は、歩樹が、歩樹だから」
ペニスから口を離した楓は内腿へそっとキスをしてから、先走りと唾液にまみれた先端へと舌を這わせた。
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