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『歩樹も楓もこっちに帰ってもう一年以上か。二人共、もういい大人なんだから、一緒になんか暮らしてないで一人暮らしをしたらどうだ』 『そうですね。考えておきます』  父の意図は分かっていたから、最初は当たり障りの無い返答を心掛ていた。 『そういえば、この前の見合いも断ったらしいじゃないか。お前ももう三十を過ぎてるんだ。早く身を固めて、跡継ぎとして孫の顔を見せてもらわないと……なあ、楓もそう思うだろう?』 『兄さんもよく見定めてるんじゃないでしょうか。織間家の為にも、ここは慎重過ぎるくらいでいいかと思います』 『まあ、それはそうだが……歩樹は本当に選ぶ気があるのか?』 『……え? 私ですか?』  良く似た容姿の二人を眺め、彼らこそ、本当に血の繋がっている親子なのだと、余計な思考に耽っていたから、突然父に話を振られて珍しく口ごもってしまう。  頷く父を適当な返事で誤魔化すことは可能だったが、歩樹は唾を飲み込むと、それまで一人考えていた事柄について話し始めた。 『結婚はします。子供についても考えています。ただ、後継ぎに関しては兄弟の中でその才幹がある人間がやればいいかと……その方が経営もうまくいきますし、私としては楓が継ぐのが一番だと思っています』  話し終えたその瞬間、表面にこそ出しはしないが父親の顔が僅かに緩み、代わりに凍てつくような視線を楓がこちらに向けたのが分かる。 『そうか。だが、織間家は長男が代々継いでいるし、歩樹も医師としての評判が高い。その件については後で話し合う時間を設けるから、結婚する気があるのなら、紹介するお嬢さんともうすこし長く付き合ってみろ。それと、楓にも見合いの話が来ているから、これを持っていきなさい』 『分かりました』 『では、私はこれで失礼します』  見合い写真を楓に渡す父親に、頭を下げて先に部屋を出た。  廊下を少し歩いたところで楓が横に並んでくるが、珍しく話し掛けて来ないし、話せるような雰囲気じゃない。  きっと腹を立てたであろう楓にも、家に帰ったらきちんと説明しておこう……と、歩樹はこの時思っていた。 ――けど……そんな時間、無かった。 「まだ休むには早いだろ」 「んっ……う゛ぅ」  髪を掴まれ痛みに顔を歪めるけれど、視線で制止を訴えてみても、止めてくれる気配はない。 「ホント、見かけによらずドエムだよな。これじゃあ仕置きにならないや」 「ぐっ……うぅっ」  こんな状況にも関わらず、再度緩く勃ってしまったペニスを爪先で弄ばれ、情けないことに腰が自然と前後へゆっくり揺れはじめた。 「これ取ったら、歩樹がなんて言うか分かってる」  口枷へと指で触れ、零れた唾液を絡め取りながら、微笑みを浮かべ告げてくる彼に、歩樹の背筋は冷たくなる。 「いつもの見合い話だけなら、こんなことしない。けど……今日歩樹が話したことは、体面じゃなくて本心だった。違うか?」 「うっ……んぅ」  尚もペニスを嬲りながら、問い掛けてくる楓の言葉に、頷くことも否定も出来ない歩樹はピクリと体を震わせ逃れるように視線を反らした。

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