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 こんな事を考えるようでは、正に父の二の舞だ。結婚しても相手の女性を幸せになどきっと出来ない。  分かっている。分かってはいるが、それでも楓に見合い話が来るくらいならば、自分が受けた方がいい。  そんな思考が支配するほどに楓が好きで堪らないなんて、既に取り返せないくらい深みに嵌まってしまっている……と、自嘲的な気持ちになるが、今の歩樹の状況では、これ以上耽る余裕は無かった。 *** 「ったく、頑固過ぎだろ」  喘ぐ歩樹を部屋へと残し、ベランダへと出た楓は一人、煙草を取り出し火を点けながら、ポツリと小さく言葉を漏らす。  日本に帰ると決めた時、一旦は辞めた煙草だったが、最近になって復活したのは仕事上のストレスもあるが、歩樹の不安を取り払えない自分に酷く苛立ったから。  歩樹の前で吸う事は無いが、ベランダに置いた灰皿に彼が気付いていない筈もない。 ――この方法じゃダメなのは……分かってる。  だけど、『罰を与える』という名目で、一時的に彼の不安を取り除く事は不可能じゃない。 「長男……だもんな」  子供の頃から植え付けられた価値観を、上辺だけでなく塗り替えるのは難しい。けれど、だからといって結婚をして後継ぎを作るなんて事は、楓に許せる筈も無かった。 ――悩んでても仕方ない、そろそろ動くか。  なるべく波風を立てないようにと思って今まで黙っていたが、今行動に移さなければ、自分を結婚させないために歩樹が動き出してしまう。 「勿体ない気もするけど」  不謹慎ながら、これほど歩樹に思われていると感じられる瞬間は……通常ではほとんど無いから、もう少しだけ追い詰めたいと考えてしまいそうになる。  だけど、そんな自分を心で制し、楓は紫煙を吐き出すと……灰皿へと擦り付けてから部屋の中へと引き返した。 「あっ…いっ…あぅっ!」  バイブの振動をMaxにしながら、部屋のドアを大きく開けば、奇妙に跳ねた歩樹の体が艶めかしくくねりだす。 「いい子に遊んでたみたいだな」 「ひっ、ああっ! ……あ゛ぅっ!」  硬く反り勃ったペニスの裏筋を指でツッと撫でてから……会陰を強く押し込んでやると、堪えきれなくなった嬌声が歩樹の口を突いて出た。 「俺が一番頭にきたのは、歩樹がなにも相談してくれなかったことだ」  静かに、だけど怒気を含めて歩樹の瞳を見据えれば、ほんの僅かだが強い瞳に迷いの色が見て取れる。 「俺達、恋人だよな。俺は歩樹も気持ちに応えてくれたと思ってたけど、違う?」 「……違わ…ない」  論理的なようでいて、楓の事になると全く目端が利かなくなってしまう。そんな所も好きだけれど、今回彼は間違えた。 「相談したら、俺が結婚するって言うと思ってた?」  尋ねても歩樹は答えない。  見抜かれていると分かっていても、口に出せはしないのだろう。  そうしなければならなかった彼の心情も分かるから……楓は深く言及せずにベッドの上へと乗り上げて、玩具の挿入ったままの後孔へ自分のペニスを宛がった。 「なっ、楓、止め……ろ」 「止めない」  バイブの振動をオフにしてから、ペニスの先端を擦り付けると、流石に怖くなったのか……歩樹の顔からサアッと血の気が引いていく。 「歩樹、挿入()いるよ」 「な……そんな……無理だ。止め……やめろ! アッ…アヴゥッ!!」  いきなり入る筈もないから、指を一本……バイブの脇から中へ差し込めば、悲鳴に近い声を上げながら歩樹が体を痙攣させた。

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