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「う゛ぅ……く゛ぅっ!」
後孔は……ギリギリと広がり既に悲鳴を上げている。
指一本でも引き攣るような痛みと恐怖を感じるのに、楓のモノを挿れるだなんて、とても正気の発言だとは思えない。
「もう一本、入れるよ」
「や、止め……楓っ! お願い……だから」
アナルの淵を指が這い、無理矢理中へと突き立てられて、とうとう歩樹は消え入りそうな声で楓に懇願した。
「あれ? 萎えた。本当に怖いんだ」
馬鹿にしたような楓の言葉に、情けなさがこみ上げる。
顔を背けて歯を食いしばると、フッと笑う音が聞こえ……次の瞬間、節ばった指が後孔から出ていった。
「……あ……んぅ」
続いてバイブも引き抜かれ、排泄時にも似た感覚に、思わず吐息が漏れてしまう。
「これは気持ち悦いんだ」
「……っ」
髪を梳きながら囁く楓の掌が凄く優しいから、緊張感に固まっていた体の強張りが解けていく。
「なあ歩樹……俺と一緒に考えようとは思わなかった?」
「それは……」
慈しむような優しいキスが、頬へフワリと降りてくる。
考えなかった訳じゃない。
けれど、相談すればきっと楓が重い負担を負おうとする。
――だから……。
「楓は、俺の分まで背負うって言ってくれた。けど、俺は……」
答えはそこに見えているのに、次の言葉が出てこなかった。
自己分析では論理的だと思って疑わなかったのに、感情ばかりが先走り……口を開いたら何を言ってしまうか自分に自信がない。
「俺の前では……長男を捨てろ」
「んっ……ぅっ」
指で顎を固定され、そっと唇を塞がれた。
決して威圧的ではなく、優しさが滲む楓の行為に、安堵感を覚えた歩樹は、甘えるように舌を突き出し彼の唇をペロリと舐める。
「ったく、あんま煽るなよ」
至近距離から端正な顔に見下ろされ、心臓が音を少し速めた。
このまま……いつものようにセックスへとなだれ込み、うやむやなままにしてしまいたいと歩樹は思っていたけれど、予想通りに事は運ばず、起きあがった楓が手足の拘束具を外し始める。
「楓、そこは……いい。トイレ行って抜いてくるから」
最後に残ったブジーへと指が伸ばされ軽く触れたところで、歩樹がそれを制すると……不思議そうな顔をしてから、端正な彼の唇の端がニヤリと綺麗な弧を描いた。
「出そうなんだ」
「やめろっ……ぅっ」
トントンと先を指で叩かれ、抵抗しようとするものの……解放されたばかりの腕は、痺れて上手く動かない。
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