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第7話

鷹野は部屋に戻ると、玄関のシューズボックスの上にキーケースをかしゃりと音を響かせて半ば投げる様に置き、浅く息を吐き出しながら玄関の床へ上がってリビングへと向かう。積み上げられたダンボールには深く溜息が零れた。今日は土曜日。明日も休みなのは助かるが、片付けに休日の時間を割くのは少々嫌なのである。幸い荷物は少ない。取り掛かれば直ぐに終わるだろう。 「今日やっといた方が楽か」 自分に言い聞かせるように言葉を吐き出した。すると積まれたダンボールの仕分けから入る。天面に「寝室」や「衣類」や「寝具」と書かれた物は寝室へ、「キッチン」と書かれた物はキッチンへと運んでいく。取り敢えず必ず使うであろうキッチンから片付ける事にした。ガムテープを破り蓋を開ければキッチン用具や新聞紙に包まれた食器やらが入っている。それを一つずつ取り出しては食器棚やキッチンの棚に直していき、冷蔵庫の電源を入れる為コンセントを刺した。冷えるには相当時間が掛かるだろう。今日の飯はコンビニで済ませるかと心の中で鷹野は決めていた。 そして次は寝室へと歩を進まると、先ずは衣類から片付けることにし、ダンボールを開ける。上着はハンガーに掛けたまま入れているので、そのままクローゼットのハンガーパイプに掛けていった。そして丁寧に畳み入れた衣服を引き出しへと直して行けば、割りと荷物が少なくあっという間に終わっていく。 「我ながら少ねぇ荷物」 ぽつりと呟きをこぼした。クローゼットには他に掃除機や縦長の扇風機等を収納している。寝室と書かれたダンボールを開ければ、目覚まし時計やまた灰皿諸々が出て来た。時計はヘッドボードへ、灰皿はローテーブルへと置く。ゴミ箱を取り出してベッドの傍に置けば、使いかけのボックスティッシュもヘッドボードへと置いた。そして、数少ない古い洋画のDVDをテレビボードへしまっていく。最後に「寝具」と書かれた大きめのダンボールを開ければシーツと掛け布団、枕が出て来た。ベッドへシーツを取り付け枕を頭の部分へ置く。寝室はこれで終わりだ。後はリビングだけである。 「片付けたらコンビニでも行くか」 浅く息を吐き出しながら空いた箱を潰してリビングに持ち戻れば、適当な場所にそれを置いた。残る小さめの箱を開ければテレビのリモコンや、最近の物と少し前になる洋画のDVD等が出て来る。リモコンはテーブルの上に置き、DVDをテレビボードにしまいこんで時計を壁に立てかけた。 「これで終わり、だな」 見渡すも空の箱しか見当たらず、呆気なく片付けは終わってしまう。すると、その箱を次々に潰して纏め始めた。それをキッチンへと持って行き、隅の方へと置いておく。そう言えば昼から何も食べていない事に気付き、先程壁にかけた時計を見遣れば時刻は16時頃を指していた。飯を食べるにしても微妙な時間である。コンビニへ行こうか迷いながらソファに腰を落とせば煙草を手に取り、箱から一本取りだしてフィルターを咥えた。箱をテーブルに投げる様に置いてはジッポーライターを取り、蓋を開けて煙草の先端に火を灯す。蓋を閉めて火を消せばジッポーライターもテーブルに投げて煙草を指間に挟み唇から離せば細く長く紫煙を吐き出した。 すると、ふと先程の足立の表情を思い出す。まるで捨てられた子猫のような寂しそうな表情。やはり若い一人暮らし、ましてや他と交流も無いとなると寂しい物なのだろうかと考えていた。 そんな事を考えていると、ポケットのスマホが短い音を奏でる。何かメッセージを受信したようだ。それを取り出せば親指を画面の上に滑らせロックを解いてアプリを開く。足立からだった。 『鷹野サン、暇?』 早速送られてくるメッセージ。やはり先程考えていた通りなのだろうかと再び親指を滑らせる。 『今片付けが終わったところ。腹が減ったんでコンビニでも行こうかと』 簡単な文章を打ち送信をタップすると直ぐに既読が付く。聞いてきた本人が暇なのだろう。 『もう終わったの?早いね。俺もコンビニ行こーかな』 鷹野は画面を見ながらゆったりと瞬いた。このメッセージから足立の気持ちをどうにか汲み取ろうとする。これは暇で話し相手が欲しいという合図なのか、先程見せた表情通りに寂しいのか。どちらにせよ鷹野は半ば強引に足立を連れ出そうとする。 『行くならドアの前に集合』 『分かった。準備して直ぐ行く!』

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