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八
いつのまにか終わった行為。
服をかき集めて見に纏う。もう、授業は終わってしまっている。放課後だ。ふらふらと立ち上がって教室から出る。
「あれ?夢?どうしてこんなところに。」
なんでここにいるの。
このタイミングで出会うの。
「なんか、疲れてる?大丈夫?」
「ああ、うん。」
「そうだ‼︎夢聞いて‼︎僕ね、生徒会に入らないかって言われたんだ。」
…る…さい。
「どうしようか悩んでるんだけど、夢の意見聞きたくてね。」
う…さい。
「夢、どうすればいいかな?」
煩い‼︎
「…夢?」
「おいっ。なんか答えろよ。光が聞いてんだろ。」
いつも、守られるのは光ばっかりだ。
今だってほらこんなにもいろんな人に囲まれて。僕の好きで好きで仕方がない、いち君だっていて。
僕が苦しんでいるときに光はこいつらに守られて。僕は誰にも助けてもらえなくて。
僕は、僕は‼︎
「煩い、煩いな‼︎光ばっかり、光ばっかり愛されて‼︎いいよね、光は。みんなに愛されて‼︎
父さんも母さんもいつも光、光で僕なんて見てもくれない。僕が好きな人だって簡単に掻っ攫って。
僕は誰にも守ってもらえない。苦しくても、悲しくても誰も助けてくれないのに。
光は、光はみんなに愛されて、守られて、囲まれて。お気楽でさ。
僕は、僕は光なんて大っ嫌いだ‼︎死んじゃえ‼︎」
バシンっ。
大きな音が響いた。
ジワジワと頬が痛み出して、やっと僕は叩かれたのを知った。
「いい加減にしろ。光が人一倍頑張ってるのよく知ってるだろ。誰にも愛されようとしなかったのは夢、お前だろ。」
僕を叩いて怒鳴りつけたのはいち君だった。ハッと気づく。ああ、なんて事を言ってしまったんだ。
僕は、僕は…。
悪意の篭った周りの目に恐ろしくなった。心も身体も、僕は汚れてしまった。
いなくなったほうがいいのは、死んだほうがいいのは、光じゃない。
ーー僕じゃないか。
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