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十一
それから夢は救急車で運ばれて行った。
光の話しによると夢は命に別条はないらしい。ただ、いくら時間が経っても夢は目を醒さない。精神的な問題なのだという。
「一ノ瀬、話したいことがある。」
夢のことを考えていると笹舟から声をかけられた。珍しいこともあるものだ。光のことだろうか。
「光なら夢の病院に…。」
「分かっている。光の話しじゃない。夢の話しだ。」
「それはどういう…。」
「ここじゃ話しは出来ない。移動するぞ。」
教室から誰もいない空き教室へ。笹舟は一白を置いて話しをし始めた。
「まずはこれを見てくれ。…怒るなよ。」
「怒る?」
笹舟は自身の携帯を俺の方へ向ける。
「夢…。」
携帯の写真。
そこに映っていたのは男達に強姦される夢の姿。取り押さえられ、苦しそうに悲しそうに絶望した顔で写真に写っていた。
「は…?夢?なんで…。」
「俺の携帯に送られてきた。光とヤってやったと書かれていた。おそらく、夢は光に間違えられたのだと思う。」
「光にはそれを…。」
「言えるはずがないだろう。光はただでさえ夢の事で傷ついているんだ。それを自殺しようとした原因が自分だったなんて知れば目も当てられなくなる。」
それじゃあ、あの時夢が光に怒鳴ったのは、強姦された後だったからか。
光の周りにはいつだって誰かが付いている。光なら襲われることはない。襲われる前に助けられる。
夢が光に劣情の目を向けてしまうなんて至極当たり前だ。光はその時囲われていて、その代わりに夢は犯されたのだから。俺は、あの時夢になんて言った…。
『誰にも愛されようとしなかったのは夢、お前だろ。』
違う、俺は知っていた。
夢が誰かに愛して欲しかったことを。
俺は知っていたのに…。
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