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十二

俺は夢と同じ立場に立ちたかった。 セフレだなんて不誠実な関係じゃなく、友人としていたかったのに。 夢とどう関係を作り直せばいいのかわからなくて、光といるのが心地良くなってそれで、また今度でいいだなんて愚かなことを考えた。 俺が夢とちゃんと向き合っていれば、もっと早く関係を修復していれば、もしかしたら夢を救えたかもしれないのに。 なんて…今更だ。 遅い。 何もかも、遅かった。 今更何を言い訳しようにも意味がない。 そんなこと言ったって無意味だ。 だって俺は間違えた。 修復できないくらいの過ちを、馬鹿で愚かでどうしようもなく最低なことを。 「一ノ瀬、勘違いするな。」 「は?」 「お前のせいであいつが犯されただなんて俺は思っていない。お前が今何を考えているのかは知らないが、なってしまったことに今更後悔したところで手遅れだ。 それに俺だってあいつとは夢とは古い仲だったんだ。少なからず俺だってショックを受けている。 あいつを光から離してしまったのは紛れもなく俺の責任だしな。光と一緒にいたら夢が傷つくこともなかっただろう。 でもな、そんなことを言っていたらキリが無い。俺はそんなことを言うためにこの事実を見せたわけでは無い。」 「じゃあ、なんで…。」 「お前が一番後悔していたからだ。お前と夢は特別な仲だったんじゃないのか。」 「特別って訳では…。」 「よくは知らないが、俺らの仲で夢を守ってやれるのはお前だけだ。夢を強姦した奴はすでに退学処分を受けているが、今後また同じことが起きないとは限らない。」 「…っ、処分がすでに決まっているのか?」 「俺も風紀にはメールが来てすぐに報告をした。だが、その後の処分が速すぎる。恐らく、夢が強姦にあったことは両親には伝わっているだろうな。強姦にあったのは自殺を図る直前のことだ。医者が暴行の後を見逃すはずがない。」 「なら、両親が訴えて…。」 「彼らは退学後も過酷な日々を過ごすことになるだろう。だが、そんな事はどうでもいい。お前が夢のアフターケアをすべきだと俺は思う。もちろん、お前が夢を見ているときに、俺は光には近寄らない。」 俺に夢のケアをする事は出来るんだろうか。 今まであれほど酷いことをしてきたのに。 今更何が出来る。 …ああ、でも、俺は夢を助けたい。 償いだなんてそんな重い事は言わない。 頼まれたからじゃない。 俺は俺自身が夢を助けてやりたい。 「俺のことは気にしなくていいよ。光にアピールしたいならすればいい。たぶん俺は笹舟に言われなくても夢の側にいたと思うから。」 「そうか…。お前がいいなら別にいい。俺も出来る限り夢のサポートをする。何かあったら教えてくれ。」

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