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十四
夢が目覚めて数日後。
正式に記憶喪失だと診断された夢は、今はご両親と光がついている。
恐らく、退院はまだ先のことになるだろう。
やっと目覚めたと思えばこれだ。
天罰か何かか。いや、夢にとって記憶喪失は自己防衛。暴行の記憶なんて無くなってしまった方がいいに決まっている。
例え、俺の記憶も失ったとしても。
唇を噛んで、拳を握りしめる。
次は間違えたりしない。
病室の外で決意を固めていると、後方から光が近づいてくるのに気がついた。なんとも言えない表情をして。
「光…?」
「優斗。夢のお見舞い、ありがとうね。」
「いや、それは別に。それより、光何か顔色が悪いよ。大丈夫?」
「…、夢さ、僕に笑いかけてくれないんだ。」
「え?」
「いつもなら笑ってくれるのに夢、笑ってくれないの。記憶なくしたから仕方ないって思ってた。だけど、何日経っても笑ってくれない。それどころか、夢っ、夢は…。」
泣き崩れた光はその場にしゃがみ込む。
俺は病室に入るのをやめて、光をその場から連れ出した。
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