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十七
幼い頃の記憶は鮮明に覚えている。
光といつも一緒に遊んでいたから。
無口な僕とは違い光はいつもいろんな人に囲まれていたけど。最後には僕の元に来て手を引っ張ってくれた。
ただ、その後の記憶は何もない。
通っていた筈の学校も、友人も、何もかも。
ただ、不思議と私生活に問題なく過ごせた。
お医者様は記憶障害にはある事だと言っていた。
リハビリはあまり順調と行かなかった。
男の人に触れられると、何故か酷く震えたから。でもあの人、僕の友達だったという一ノ瀬君に触れられても何も感じなかった。
高校の友達と言っていたが、本当に親しい仲だったのかもしれない。
「ジッとこっち見てどうしたの?やっぱり体調悪い?」
「ううん。大丈夫。」
今日から世の中は長期休暇に入ったらしい。日にち感覚が全くない今の僕にとって今日も変わらない1日。
だけど、今日は特別に一ノ瀬君の友人の別荘に行くことになっている。
それはとても楽しみな事。
「どこか体調が悪くなったらすぐに言ってね。」
「僕、別にどこか悪い訳じゃないよ?」
「それでも何か具合が悪くなるかもしれないから。それに夢のご両親にも夢のこと頼まれているからさ。」
両親は僕がどうしても川を見に行きたいと言ったら嬉しそうに頷いてくれた。ただ、仕事関係で連いていけないことに酷く残念な様子だった。
「車、着いたみたいだ。降りよっか。」
車椅子での移動。
一ノ瀬君が押してくれるらしい。
少し申し訳ない。
一階に着くと光が何人かの男の子に囲われていた。
「あれは?」
「…?おかしいな。今日は光と笹舟だけだって言ってたのに。」
騒がしい集団に自然と眉がよる。少しだけ震える手をぎゅっと握りしめた。
「あっ、夢〜‼︎」
大きく手を振る光に僕も軽く手を振る。近寄ってきた集団にヒッと思わず声が出た。
「夢…。ちょっと話しに行ってくるよ。少し待ってて。」
困り顔の一ノ瀬君。きっと僕が情けない声を出したせいで気を使わせてしまったのだ。
悪い、そう思いながらも何故かあの集団を見ると自然に恐怖がこみ上げてくる。言い争いが終わるととぼとぼと一ノ瀬君は戻ってきた。
「ごめん、夢。人が少し増えるけど、大丈夫?」
「うん。」
ちらりと光の方を見ると、楽しそうに笑っている。
光が楽しいなら構わない。
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