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十八
僕を合わせて総勢7名。
山の中にある別荘に着いた。
川のほとりに立つロフトは木製の広くて大きな建物だった。僕は一ノ瀬君に手伝ってもらいながら車から降り、車椅子で移動する。
本当は今日までに生活に支障がなくなる程度までリハビリを終わらせようと思っていた。だけど、現実はそうはいかない。
そもそもリハビリにまで辿り着くのにだいぶかかった。
半年も眠り続けた結果、体力含め食べる物も急には元に戻せなかったのだ。
結局、山でも使える頑丈な車椅子を両親が用意し、それに乗る形でここまで来ることになった。
本当に両親には感謝している。
「夢、ほらっ、川だよ‼︎」
光がキラキラとした目でこちらを見てくる。
僕もうんと頷いた。
川の流れる音、遠くから聞こえる鳥の声、さわさわと揺れる木々の音。
ああ、そうだ。
僕はこれが好きなんだ。
うっとりと五感全てで感じとる。
「先に別荘まで行って、荷物を下ろそうか。」
一ノ瀬君の声で現実に戻る。
ロフトの中も想像通りの造り。
木々の匂いが微かにするロフトは心を落ち着かせてくれる。
「部屋数は?」
「5部屋だな。」
「微妙だね。1人でつかう部屋が3つと2人でつかう部屋が2つか。じゃあ、僕と夢が同じ部屋ね。」
「え⁉︎なんでだよ‼︎」
「だって僕たち双子だし。それに、夢は怪我してるから1人でいさせられるわけないでしょ?」
ギロリと睨まれた。
確か、光がカイって呼んでた。
あの眼、僕は知っている。いつも光と一緒にいた僕に嫉妬して嫌悪する目。そして決まって、お前さえいなくなればと…言われる。
「夢…。大丈夫?カイ。夢は病み上がりなんだ。睨み付けるなよ。それに、今回はお前たちが勝手についてきたんだ。文句を言うなら、さっさと帰ってくれ。」
「ちっ…。」
「夢、カイは誰に対してもあんな感じだ。あまり気にしないで。」
「うん。」
一ノ瀬君の言葉に頷きながらも、僕は心を掻き毟られているような気分になった。あの人の目を見ると、思い出したくない何かを強制的に思い出させるような、そんな気が…。
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