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二十一
夕日が沈むのを静かに眺める。
光達は夕飯の準備をしに別荘に戻った。
僕は何も出来なし、気を使うと分かっていたので、大人しくここで待っている。
ずっと、川の音を聞きながら本を読んでいた。心が酷く穏やかだった。
「おい。」
振り返ると、光の友人がいた。
確か、カイ君。
光を愛してやまない人。
僕のことを快く思っていないのだろう。鋭い目つきで睨んでくる。
「お前、よく光を傷付けといて、のうのうと生きてられんな。」
「光?」
「記憶忘れたかなんだか知らねぇけど、光は今もずっと傷ついてる。お前が、お前が光に勝手に嫉妬して、光を傷付けて、そんで死のうとしたから。
だから光は自分が悪いんじゃないかって、ずっと自分を攻め続けてる。
お前のせいだぞ。
お前のせいで、光は元気がない。
あの時、お前なんて死ねば良かったんだ!」
死ぬ?僕が?
自殺、
…自殺?
誰が、誰が、僕が?
僕が自殺?
光を傷付けて?
なんで?
どうして?
頭が痛い。
頭が痛い。
何か、大事なことを、忘れてる。
忘れてる気がする。
思い出せ、
思い出せ、
思い…出したくない…。
「夢?」
ハッと、目が覚める。
一ノ瀬君が目の前にいた。傾いていた太陽はとっくに沈み、既に夕飯は作り終えているようだった。
「ボーッとしてたから心配した。ご飯食べれそう?」
「あんまりお腹すいてない。」
「そっか。でも少しだけでいいから食べよ?これ、光が作ったんだよ。不器用なのに夢に食べさせたいからって。」
光、光、光。みんな、光ばっかり。
「…大丈夫?本当に体調が悪いんだったら、部屋に戻るか?」
「あ…なんでもない。なんでもない。」
なんで、僕…、今…。
なんてことを。
『お前が光に勝手に嫉妬して、光を傷付けて、そんで死のうとしたから。だから光は自分が悪いんじゃないかって、ずっと自分を攻め続けてる。あの時、お前なんて死んどけば良かったんだ!』
僕は、やっぱり光を…。
だから、これは罰なのか。
光を傷付けて、のうのうと生きてるから。
光に敵うはずがないのに、醜く嫉妬したから。
「そうだ、あとで花火しようって話をしていたんだ。夢も線香花火くらいならできるんじゃないかな。」
「うん、ありがとう…。」
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